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腸管腫瘍 (リンパ腫) を切除した雑種猫のRちゃん

  1. 専門分野
  2. 消化器外科
  3. 消化管の腫瘍
  4. 腸管腫瘍 (リンパ腫) を切除した雑種猫 Rちゃん

Keyword: 高悪性度 (High grade) 消化器型リンパ腫、腸重積、直腸脱、腸切除、腸腸固定術

患者紹介

雑種猫、14歳、去勢雄
肛門から腸が飛び出しているとの主訴で受診されました。

診断

直腸脱を認めました。
血液検査にて貧血(PCV 19.2%)および低アルブミン血症(2.0g/dl)を認めました。
CT検査にて結腸壁の肥厚および腸間膜リンパ節の腫脹を認めました。
腫瘍による腸閉塞または重積を考慮し、試験開腹しました。

試験開腹

開腹下にて回腸遠位を起始部とする腸重積を認め、用手にて整復しました。整復後、回盲部腸壁の肥厚および内腔の狭窄を認めたため、回盲部から近位および遠位にそれぞれ3-4cmのマージンを確保し切除後、端端吻合しました。腸重積の再発防止のために腸腸固定術を行い、腫大した腸間膜リンパ節を郭清しました。

  • 腸重積を用手にて整復
  • 腸切除、端端吻合、リークテスト
  • 腸腸固定術

術後経過

切除した回盲部および腸間膜リンパ節の病理組織学的検査結果は、高悪性度(High grade)リンパ腫でした。断端マージン部に腫瘍細胞は認められませんでした。
術後元気食欲は良好でした。
飼い主様と相談の結果、抗がん剤治療は実施しませんでした。
無事退院しましたが、徐々に衰弱していき術後1ヶ月で亡くなりました。

猫の高悪性度(High grade)消化器型リンパ腫の治療と予後

リンパ腫は造血器系腫瘍であり、本症例のように診断時にはリンパ節などへ転移していることが一般的です。転移が成立した場合、原発部位をマージンクリアで切除しても体内には腫瘍細胞が残ってしまいます。このような場合、術後化学療法(抗がん剤)が有効な場合があります。しかし、抗がん剤の副作用により一般状態が低下する場合もありますので、慎重な判断が必要です。
化学療法として、単剤ではCCNU(ロムスチン)やACNU(ニムスチン)、多剤併用療法ではシクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニゾロンを組み合わせたCOPプロトコルや、COPにドキソルビシンを加えたCHOPプロトコルが挙げられます。どのプロトコルがもっとも優れているかについて結論は出ていません。
近年報告された外科手術により治療した高悪性度消化器型リンパ腫の猫(一部の症例では術後化学療法を実施していない)において、小腸に発生していた症例の生存期間中央値は64日でした(Tidd et al., 2019)。