日本小動物外科専門医のいる動物病院
副腎は左右の腎臓の近くにある小さな臓器で、体に必要なホルモンを作っています。副腎腫瘍は犬では比較的稀で、健康診断や他の病気の検査で偶然見つかることがあります。
副腎腫瘍は、その由来により「副腎皮質」と「副腎髄質」に発生したものに分けられます。副腎皮質腫瘍はコルチゾール、アルドステロン、性ホルモンなどが過剰に産生することがあり、副腎髄質腫瘍はカテコールアミンという血圧や心拍に関係する物質が過剰に出ることがあります。
猫の副腎腫瘍は犬よりも稀ですが、アルドステロンを過剰に産生する腫瘍が問題になることがあります。この場合、高血圧や低カリウム血症がみられることがあります。
腫瘍の種類、ホルモン産生性、腫瘍の大きさ、血管への広がり、転移の有無などによって異なります。小さな腫瘍やホルモンを産生しない腫瘍では、症状がほとんどないこともあります。
クッシング症候群がみられます。多飲多尿、食欲亢進、腹部膨満、皮膚が薄くなる、脱毛、筋肉量低下、呼吸促迫などの症状があります。
高血圧や低カリウム血症が問題になります。特に猫では、元気がない、食欲がない、首が下がる、筋力低下、眼底出血や網膜剥離による視力低下などがみられることがあります。
血圧や心拍を変動させる物質が原因となり、高血圧、頻脈、不整脈、急な虚脱、パンティング、興奮、粘膜蒼白、脱力などがみられることがあります。症状がはっきりしないことも多く、検査で初めて疑われる場合もあります。
腫瘍の有無、大きさ、種類、腫瘍がホルモンを産生しているか、血管に入り込んでいないか、転移がないかなどを評価します。
血液検査、尿検査、血圧測定は、ホルモン異常や全身状態を確認するために行います。クッシング症候群が疑われる場合には、ACTH刺激試験、低用量デキサメタゾン抑制試験、尿中コルチゾール/クレアチニン比などを組み合わせて評価します。
超音波検査では、副腎の大きさ、形、内部構造、周囲の血管との関係を確認します。副腎腫瘍が大きい場合や形が不整な場合、悪性腫瘍の可能性があります。ただし、超音波検査だけで腫瘍の種類を確定することはできません。
CT検査は、手術を検討するうえで特に重要な検査です。腫瘍の大きさや広がり、後大静脈や腎静脈などの血管浸潤、腫瘍栓、リンパ節や肺などへの転移の有無を詳しく評価できます。
腫瘍の種類や大きさ、ホルモン異常の有無、血管への浸潤、転移の有無、年齢、持病、麻酔リスク、ご家族の希望などに基づいて決定します。
ホルモンを過剰に産生している腫瘍、悪性の可能性が高い腫瘍、大きい腫瘍、血管浸潤がある腫瘍などで手術を検討します。
一方で、副腎摘出術は体への負担が大きい手術です。腫瘍が大きい場合や血管浸潤している場合には、血管の処置が必要になることがあります。そのため、手術前にはCT検査などで十分に評価し、麻酔管理や術後管理を含めて慎重に計画します。
手術が難しい場合やご家族が手術を希望されない場合には、内科治療を選択することがあります。クッシング症候群では薬物療法などでホルモンの影響を管理することがあります。アルドステロンが関係する場合には、血圧やカリウムを管理する薬を使用します。ただし、内科治療は腫瘍そのものを取り除く治療ではなく、定期的な検査が必要です。
副腎摘出術では、出血、血圧の変動、不整脈、血栓、膵炎、腎機能の悪化、感染、ホルモン不足、電解質異常、低血糖などが問題になることがあります。命に関わる合併症が起こる可能性もあります。
コルチゾールを出す副腎腫瘍では、手術後に体内のコルチゾールが不足することがあり、術後にステロイド補充が必要になる場合があります。褐色細胞腫では、周術期に血圧や心拍が大きく変動することがあるため、集中的な麻酔・循環管理が重要です。
腫瘍の種類、大きさ、悪性度、ホルモン異常の有無、血管への浸潤、転移の有無、手術前の全身状態、術後合併症の有無によって異なります。
血管浸潤がなく、小型で切除可能な副腎腫瘍では、手術によって長期的に良好な経過が期待できる場合があります。一方で、大型の腫瘍、血管内に広がる腫瘍、転移を伴う腫瘍では、手術の難易度や周術期リスクが高くなります。
手術を行わずに経過観察または内科治療を選択した場合は、腫瘍の種類や進行度によって予後が異なります。特に血管浸潤している腫瘍では、非外科的管理のみでは限界があります。それぞれの症例で手術の利益とリスク、内科管理の限界を比較して治療方針を決める必要があります。
副腎腫瘍は、ホルモン異常を起こしたり、血管に入り込んだり、転移したりする可能性があるため、腫瘍の性質をできるだけ正確に評価して治療計画を立てることが大切です。
当院では、血液検査、ホルモン検査、超音波検査、CT検査などを組み合わせて、手術が必要か、内科治療で管理できるか、定期検査で経過をみるべきかを検討します。ご家族の不安やご希望も踏まえ、それぞれの患者さんに合わせた治療方針をご提案します。
水を飲む量が増えた、尿が多い、食欲が異常に増えた、急に元気がなくなった、ふらつく、失明したように見える、呼吸が荒い、倒れるなどの症状がある場合には、早めにご相談ください。