日本小動物外科専門医のいる動物病院
てんかんとは、24時間以上の間隔をあけて2回以上のてんかん発作が認められる脳の病気です。犬の有病率は概ね0.6-0.75%と推測されています。「発作」と聞くと全てがてんかん発作と思われがちですが、低血糖や低酸素、肝臓・腎臓の病気、中毒などが原因で起こる発作もあり、これらは反応性発作と呼ばれ、てんかん発作とは区別されます。
原因によって大きく2つに分類されます。
特発性てんかん
MRI検査や脳脊髄液検査などで明らかな異常が見つからないてんかんです。てんかん発作の初発年齢が6ヶ月齢〜6歳齢の若齢〜中齢の犬で多く見られます。
構造性てんかん
脳そのものに異常があり、その結果として発作が起こるてんかんです。
原因としては、
・脳腫瘍
・脳炎
・脳梗塞・脳出血
・頭部外傷
・水頭症などの先天性脳疾患
などがあります。
高齢で初めて発作を起こした場合や、ふらつき・旋回・視覚異常・性格の変化などの発作以外の症状も見られる場合は、脳腫瘍や脳炎などの構造的な病気が隠れている可能性があります。
てんかん発作は、脳内の異常な電気活動によって起こります。発作の現れ方は様々ですが、大きく2つに分類されます。
焦点発作
脳の一部分(焦点)で起こる発作です。
・顔や眼瞼のピクつき
・手や足など体の一部だけのけいれん
・口をくちゃくちゃ動かす
・よだれが出る
・瞳孔が開く
・一点を見つめる
・空中を噛むような仕草
などの症状が見られます。
全般発作
脳の全域で起こる発作です。
・意識を失う
・四肢が突っ張る
・手足をガクガクと動かす
・よだれが出る
・脱糞や失禁を伴う
などの症状が見られます。
注意が必要な発作
・群発発作
24時間以内に2回以上発作を繰り返す状態です。
・重積発作
次のいずれかに当てはまる状態です。
・1回の発作が5分以上続く
・発作が止まっても意識が回復しないまま次の発作が連続して起こる
群発発作や重積発作は命に関わることがあるため、速やかに動物病院を受診してくだい。
最も重要なのは、「本当にてんかん発作なのか」を確認することです。
そのため、発作の様子をスマートフォンなどで撮影していただけると、診断の大きな助けになります。
・問診
・身体検査
・血液検査
・尿検査
・神経学的検査
などを行い、発作の原因となる全身疾患がないかを確認します。
その後、必要に応じて
・MRI検査
・脳脊髄液検査
・脳波検査
を行い、脳の異常の有無を詳しく調べます。
治療を開始するかどうかは、発作の頻度や重症度を総合的に判断して決定します。
一般的には、
・6ヶ月以内に2回以上発作がある
・群発発作を起こした
・重積発作を起こした
・発作の回数や重症度が増加している
などの場合には、抗てんかん薬を開始することが推奨されます。
てんかん治療の目標は、発作頻度を6ヶ月に1回(少なくとも3ヶ月に1回)以下の頻度でコントロールすることであり、治療の有効性は発作頻度が50%以上減少することを指標にしています。発作の回数を十分に減らし、日常生活を安心して送れる状態を維持することを目指します。
主な治療法
・抗てんかん薬
抗てんかん薬は、服用を開始してから体内の薬剤濃度が安定するまで一定の期間が必要です。また、自己判断で薬を中止したり量を減らしたりすると、発作が悪化する危険があります。必ず獣医師の指示に従って継続してください。
・食事療法
特発性てんかんの犬では、中鎖脂肪酸(MCT)を強化したケトン食が発作頻度の減少に役立つことが報告されています。代表的な療法食として、Purina社の「ニューロケア」があります。
・てんかん外科
多くのてんかんは抗てんかん薬によってコントロールできますが、一部の患者では複数の抗てんかん薬を使用しても十分に発作をコントロールできない難治性てんかんが見られます。このような場合は、てんかん外科が治療の選択肢となる場合があります。しかし、獣医療においててんかん外科を実施できる施設は限られており、十分な検査と適応の判断を行ったうえで治療方針を決定することが重要です。