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幽門排出障害・幽門狭窄(Gastric retention & Outflow obstruction)

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幽門排出障害・幽門狭窄とは

幽門排出障害、幽門狭窄は幽門洞および幽門部の機能的、器質的異常により、胃内容物の十二指腸への排出が障害される疾患です。
先天性幽門狭窄は短頭種(ボクサー、ボストンテリア、ブルドック) に好発し、胃平滑筋の肥厚によります。
後天性幽門狭窄は中〜高齢の小型犬種(ラサアプソ、シーズー、ペキニーズ、プードル)の雄に好発し、筋層および粘膜の肥厚が一般的です。
発症原因は不明ですが、胃から分泌されるガストリンが胃の平滑筋および粘膜の肥厚を誘発することが知られています。また、神経機能障害や炎症も幽門狭窄の一因と考えられています。

症状

慢性的な嘔吐、体重減少がみられます。摂食から嘔吐までの時間は一定せず、吐物も未消化または部分的に消化された食べ物など様々です。

診断

X線検査、超音波検査、病理組織学的検査等により診断します。
単純X線検査では、食後12時間以上経過しても明らかな胃内容の陰影や胃拡張が認められると本疾患が疑われます。
バリウム造影検査では、胃からの排出の遅延や幽門部領域の陰影が明瞭になります。バリウムは正常な胃から5~15分後に排出され始め60~120分で消失します。12-24時間後でも胃内にバリウムが残っている場合は胃排出の遅延と判断します。また幽門狭窄では胃排出は重度に延長しますが、蠕動運動などは認められ、胃の運動障害とは区別されます。
超音波検査では、胃内容物の貯留、幽門部の粘膜や筋層の肥厚が確認できます。
内視鏡検査では、幽門部の粘膜表層の肥厚や炎症が確認できる場合がありますが、粘膜より深い筋層の病変を検出できない場合もあります。内視鏡が幽門から十二指腸にスムーズに挿入できれば、幽門狭窄は否定的ですが、確定診断には内視鏡生検や試験的開腹による全層生検が必要です。

治療

軽度な狭窄や胃の運動性低下による排出障害は、胃の運動性を亢進させる薬で改善することがあります。
幽門狭窄は肥厚による物理的な閉塞であるために、内科的治療では根本的な改善は望めません。
根本的な外科治療法としてY-U幽門形成術、ビルロート法などがあります。

症例

シーズー、雄、12歳

  • バリウム造影検査
  • 胃の重度の拡張と排泄遅延を認める
  • 開腹手術
  • 触診で幽門部の肥厚を確認した
  • 肥厚している幽門部を切除している
  • 胃と十二指腸の切除端をビルロートⅠ型で吻合
  • 吻合後、漏れがないことを確認している
  • 切除した組織

切除組織は内腔に腫瘤が形成され、病理組織学検査で胃ポリープと診断されました。