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脾臓腫瘍(splenic tumor)

脾臓腫瘍

脾臓は、赤血球の破壊と貯蔵、免疫応答、造血、循環などの役割を担っている、体内で最大のリンパ器官です。他のリンパ器官と異なり血液循環と直接連絡しているため、血液媒介抗原に対する早期の免疫応答など、生体において重要な役割を果たしています。

脾臓の疾患は腫瘍性疾患、非腫瘍性疾患、その他の疾患(脾臓捻転、外傷など)の3つがあり、そのうち腫瘍性疾患が占める割合は犬で約50%、猫では37%と報告されています。犬に頻発する血管肉腫は、犬の脾臓腫瘍の80%を占めます。猫では肥満細胞腫、リンパ肉腫、骨髄増殖性疾患が一般的で、血管肉腫は稀です。

脾臓腫瘍の種類

悪性腫瘍
・血管肉腫     ・軟骨肉腫
・線維肉腫     ・組織球増殖症
・脂肪肉腫     ・リンパ肉腫
・肥満細胞腫    ・間葉細胞腫
・骨肉腫      ・粘液肉腫
・横紋筋肉腫    ・平滑筋肉腫
・未分化肉腫    ・転移性腫瘍 など
良性腫瘍
・線維腫
・血管腫
・脂肪腫
・骨髄脂肪腫 など
  • 脾臓の転移性腫瘍
  • 血管肉腫

血管肉腫は犬に最も多い脾臓腫瘍で、血行性に全身の様々な臓器(右心房、肝臓、脳など)に転移しやすく、診断時にはすでに転移している可能性があります。また、貧血、血小板減少、播種性血管内凝固(DIC)などの血液学的および止血異常を起こすことも知られています。
血管肉腫に対し脾臓摘出を行った症例の生存期間中央値は19-86日であり、脾臓摘出と抗がん剤治療を併用した場合は141-179日と報告されています。

  • 非腫瘍性疾患

脾臓の非腫瘍性疾患で最も一般的なものが血腫です。血腫は腫大して腹腔内臓器を圧迫したり、破裂して腹腔内出血を起こします。結節性過形成も血腫を生じることが知られています。
破裂などに伴う深刻な症状を示している場合を除き、非腫瘍性疾患の予後は良好で、症例の多くは外科的治療の後、健康な生活をおくることができます。

症状

脾臓には体全体の10-20%の血液が貯蔵されています。多くの脾臓腫瘍は血液供給が豊富であり、大きく成長した脾臓腫瘍が破裂し腹腔内で大出血を起こすと、急速にショック症状(頻脈、低血圧、毛細血管再充満時間の延長、呼吸促迫など)を示します。
一方、出血のない症例の多くは無気力、脱力、嘔吐、食欲不振などの非特異的な症状を示します。そのため、腫瘍が破裂するまで脾臓の疾患に気づかないこともしばしばあり、他の疾患に対する画像診断の際に偶然脾臓腫瘤が発見されることも珍しくありません。

治療

脾臓疾患に対する一般的な治療法は摘出です。脾臓の病変が限局した外傷や捻転など、一部の脾臓を温存可能な場合は脾臓の部分的な切除を行うこともありますが、ほとんどの腫瘤性病変には脾臓全摘出が適用されます。脾臓は生体において重要な役割を持つ臓器ですが全摘出後には脾臓の機能は肝臓やその他のリンパ節に引き継がれるために、深刻な合併症を起こさないことが知られています。
最も多い合併症が手術中の出血で、腹腔内出血により重度の貧血を起こしている症例では術前に輸血が必要です。脾臓は免疫応答の重要な器官であるため高齢動物や免疫不全を生じている動物では術後の感染などに注意が必要です。
脾臓は左上腹部で胃と接し解剖学的に関連性を持つため、脾臓摘出後に胃拡張捻転の発生率が増加(5.3倍)するとの報告があります。15kg以上の犬やストレスを感じやすい犬など将来的に胃拡張捻転発症のリスクが高い症例では脾臓摘出と同時に予防的胃腹壁固定術を実施することもあります。

  • 摘出中の脾臓