日本小動物外科専門医のいる動物病院
外陰部・膣の腫瘍は犬の腫瘍性疾患の約3%を占めます。避妊手術をしてない10歳頃の雌に好発します。犬の外陰部・膣の腫瘍の多く(73-84%)は良性腫瘍で、平滑筋腫、線維平滑筋腫、線維腫などが挙げられます。悪性腫瘍には平滑筋肉腫、移行上皮癌、血管肉腫、横紋筋肉腫などが報告されています。猫での報告は稀です。
外陰部からの腫瘤逸脱、陰部からの出血あるいは膿状の分泌物、骨盤腔内の占拠性病変による排便、排尿障害などが認められます。
外貌から腫瘤が確認できない場合は膣鏡診、膣造影、超音波検査、CT検査などで腫瘤の発生部位、大きさ、形態を評価し、細胞診や病理組織学的検査により確定診断します。
治療法は動物の不妊化および腫瘍の切除です。平滑筋腫や線維腫などは雌性ホルモンとの関連し、避妊手術の再発防止効果が示唆されています。腫瘤切除には腫瘤の発生部位、大きさ、形態、腫瘍の悪性度などによって、会陰切開と局所的な切除、膣外陰部切除術、膣亜全摘出術などの術式を選択します。骨盤腔内の巨大な腫瘍や悪性腫瘍が疑われる場合は骨盤の骨切り術を併用した膣全摘出術を行うこともあります。
良性腫瘍は外科手術によって根治可能です。平滑筋腫の犬に避妊手術を行わず局所切除のみの場合再発率は15%、避妊手術を行った患者では再発はなかったとの報告もあります。悪性腫瘍では転移や再発に注意が必要です。