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手根関節の過伸展障害(Carpal hyperextension)

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  4. 手根関節の過伸展障害

手根関節の過伸展障害とは

 手根関節は人間の手首に相当する関節です。犬と猫の手根関節では複数の骨が近位と遠位の2列に配列し、靭帯や腱とともに前腕手根関節、手根中央関節および手根中手関節を形成します。過伸展障害は犬の手根関節疾患で最も一般的で、中型犬や大型犬において落下事故やジャンプの後などに起こります。事故や外傷歴のない慢性進行性の過伸展障害がある場合には免疫介在性関節疾患や靭帯の変性性疾患を鑑別する必要があります。手根関節を過伸展した状態で様々な程度に跛行し、関節の腫れや痛みなどを伴います。整形外科的検査で関節可動域を評価し、肢端に応力をかけた手根関節の最大伸展位でのストレスX線撮影により損傷がどの関節レベルで起こっているかを評価します。
 重度の手根過伸展障害は、外固定などの保存的治療や内科治療では良好な機能回復は見込めません。損傷している関節レベルや損傷のタイプ、患者の活動性、飼い主様の要望などに応じて外科的に全関節固定術あるいは部分関節固定術を行います。全関節固定術は手根過伸展障害の治療法として最も一般的で、骨プレートや創外固定法、クロスピン、スクリューなどにより前腕手根関節、手根中央関節および手根中手関節の3つの関節全てを外科的に癒合させます。手根関節の主要な関節である前腕手根関節が損傷している場合には、仮に手根中央関節と手根中手関節が正常であったとしても、全ての関節レベルにおける関節軟骨の掻爬と海綿骨移植を行い全関節固定術を実施します。一方、前腕手根関節が障害されておらず、手根中央関節と手根中手関節に損傷が限定される場合には部分関節固定術を適用することがあります。
 骨癒合には概ね12〜16週を要し、術後6〜8週間は全関節固定術・部分関節固定術ともに外固定を併用します。いずれの方法も治療反応は良好ですが、一部の患者では癒合不全、変形癒合、インプラントの緩み、皮膚潰瘍、プレート縁での中手骨骨折などの合併症が報告されています。

参考文献
Whitelock RG, Dyce J, Houlton JEF. Metacarpal fractures associated with pancarpal arthrodesis in dogs. Vet Surg. 1999;28:25-30.
Denny HR, Barr ARS. Partial carpal and pancarpal arthrodesis in the dog: a review of 50 cases. J Small Anim Pract. 1991;32:329-334.

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