日本小動物外科専門医のいる動物病院
ミニチュアダックスフンド、8歳、去勢雄
肛門周囲の痛みを主訴に来院し、直腸検査とCT検査にて肛門腫瘤(2.0cm)と腰下リンパ節の軽度腫大(0.8cm)が認められました。血液検査における高Ca血症などの異常は認められませんでした。
肛門腫瘤に対してFNA検査を実施したところ腫瘤は肛門嚢アポクリン腺癌と診断されました。
腫瘤の切除と腰下リンパ節の郭清(切除)を実施しました。
切除した肛門腫瘤は病理検査でも肛門嚢アポクリン腺癌と診断され、腰下リンパ節には肛門嚢由来の腫瘍細胞が認められました。
術後からカルボプラチンを用いた抗がん剤治療を開始しました。
手術より401日後に複数の肛門腫瘤が認められ、FNA検査で肛門嚢アポクリン腺癌の局所再発が疑われました。
CT検査で腰下リンパ節に異常は認められませんでした。
術後429日に局所腫瘤の再切除を行いました。CT検査で異常が認められなかったため腰下リンパ節郭清は実施しませんでした。
食欲が低下し便がゆるい様子が見られ検診に来院しました(最初の手術より1605日後)。直腸検査、超音波検査およびCT検査で腰下リンパ節の腫大(4.4×2.8cm)による骨盤腔の狭窄が確認できました。肛門周囲に局所再発は認められませんでした。
術後1633日に再び腰下リンパ節郭清を実施しました。
術後、食欲や排便状態は改善し、しばらくは元気な生活を送っていましたが、最初の手術より1743日頃から少しずつ食欲低下や排便排尿困難が見られるようになり、術後1901日目に自宅にて亡くなりました。
診断時に肛門嚢アポクリン腺癌の所属リンパ節転移が存在する患者では術後生存期間は約1年とされていますが、腫瘤切除に加え腰下リンパ節郭清を行うことでトノちゃんのように長期的な生存が期待できます。また、転移の認められる患者でも術後に抗がん剤を使用することで生存期間のさらなる延長が期待できます。