日本小動物外科専門医のいる動物病院
頭部外傷は、交通事故、落下事故、咬傷などが原因で起こります。頭蓋骨骨折、脳損傷、出血、血腫などが生じると、脳浮腫や脳ヘルニアなどの生命を脅かす重篤な状態に陥ります。
頭部外傷の動物はショック状態で来院することが多く、まずは気道確保、呼吸/循環管理を優先します。静脈輸液、酸素化、陽圧換気などにより動物が安定化したら、神経学的検査で意識レベル、運動能、脳幹反射などの頭部外傷の重症度や他の神経障害を評価し、生命を脅かす可能性のある呼吸器系や腹部臓器なども評価します。頭部外傷の画像診断は短時間で撮影可能なCTが有用で、急性頭蓋内出血や頭蓋骨骨折などはMRIに比べて良好に描出されます。
頭部外傷の内科治療は脳血流維持と脳圧コントロールが重要です。マンニトール投与、頭部挙上、過換気などを実施して脳圧を低下させるとともに、必要に応じて抗てんかん薬やグルココルチコイドなどを投与します。
手術適用の基準やタイミングは、神経症状の程度、画像所見、頭蓋内圧亢進の程度などに基づいて決定します。脳内出血や血腫によって脳圧が亢進している場合、脳圧亢進により脳ヘルニアを起こしている場合、頭蓋骨の開放性骨折や陥没骨折、内科治療への反応が乏しく神経症状が悪化する場合などに緊急手術を実施します。
来院時に脳幹反射が消失し昏睡状態にある動物などでは予後はあまり良くなく、脳圧亢進/脳ヘルニア、肺炎、DIC、敗血症などによって周術期に死亡することがあります。外傷から数ヶ月〜数年経過後にてんかん発作を起こすことがあります。頭部外傷により絶望的な状況の患者でも、適切な治療により重篤な状態を乗り越え、積極的な治療とリハビリを継続することによって日常生活を送れるようになる可能性がありますので、あきらめずに治療することが肝心です。