日本小動物外科専門医のいる動物病院
チワワ×ヨークシャーテリアmix犬、9歳齢、1.8kg
頭に土鍋が落下して頭部外傷を負い、昏睡状態で救急搬送されました。
来院時、ショック状態のため静脈輸液、酸素化などのショック治療を優先し、安定した後に神経学的検査や画像検査を実施しました。
頭部の皮膚裂傷と著しい出血がありました。
意識レベルは低下し横臥状態でした。
左側前頭骨、頭頂骨、側頭骨の粉砕骨折および頭蓋内への陥没が認められました。
頭蓋内の血腫を除去した後に陥没した骨片を整復しました。ニューロドリルにて骨孔を作成し、非吸収糸にて隣接する骨片同士を結紮することで再陥没を防止しました。
術後数日間は発作症状が認められ、抗てんかん薬で治療しました。意識レベルが低下し、自力飲水・採食が困難なため、胃ろうチューブで長期的に栄養管理しました。
術後50日までは横臥状態が続き、随意運動は認められますが起立歩行は困難でした。肺炎や褥瘡予防のために頻繁に体位変換し、少しずつリハビリテーションを開始しました。
術後57日頃から短時間であれば起立可能となり、少しずつ改善する様子がみられました。
術後67日頃にはふらつきながら自力歩行できるようになりました。
昏睡状態で来院し一時は生命の危機に陥りましたが、緊急外科治療、栄養管理、リハビリテーションなどが功を奏し、劇的に回復しました。回復までに長期化する可能性はありますが、脳損傷を受けた犬や猫の回復力は驚異的で、一見絶望的な状況であっても、積極的な治療を継続することで問題なく日常生活を送れるようになる可能性があります。