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消化管内異物(Gastrointestinal foreign body)

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食道内異物

犬の食道異物は鶏の骨が多く、猫では魚の骨や針などが一般的です。食道異物は胸郭前孔、心基底部や食道尾側などの食道が拡張しにくい場所に閉塞します。過去の研究では、犬の食道異物のうち60〜80%が心臓と横隔膜の間に、10〜30%が心基底部で起こると報告されています。小型犬での発生が多く、また異物による食道閉塞を起こした犬の64%は3歳未満であったとの報告があります。

症状

症状の発現は急性に起こることが多く、食事直後の吐出や悪心、流涎、食欲不振などが認められます。慢性経過の症例では、体重減少がみられることがあります。針などの鋭利な異物により食道穿孔を起こしている場合には、肺炎や縦隔気腫、胸膜炎、気胸などにより呼吸困難や発熱を起こし、上部気道への異物進入や誤嚥性肺炎などにより呼吸器症状を示す場合もあります。

診断

通常は単純X線検査により診断が可能で、肺炎や胸水などの併発も同時に評価します。X線透過性の異物の診断には食道造影検査を必要とする場合がありますが、食道穿孔が疑われる場合にはバリウム検査は実施すべきではありません。内視鏡検査は異物の形態、食道粘膜の評価、穿孔の有無などの評価に有用で、場合によってはそのまま異物を摘出することも可能です。

  • X線検査
  • 心基部尾側の異物
  • バリウム造影検査による異物の大きさの確認。食道穿孔はない。

治療

最初は侵襲性の低い内視鏡による摘出を試みます。内視鏡により摘出できない場合や食道穿孔が疑われる場合には外科的に摘出します。異物を胃内に押し出し、胃切開により摘出することもあります。

  • 内視鏡での異物摘出を試みたが胃内への押し込みができないため、肋間切開による胸部食道アプローチにより食道切開し異物摘出した
  • 摘出した異物(骨付き肉)

胃内異物

胃内異物は幽門通過障害、慢性刺激による胃粘膜の損傷、胃酸の過剰分泌による胃炎の原因となります。犬では石、おもちゃ、骨、硬貨、衣類などが、猫では毛球や針などがよく認められます。若い患者での発生が多く、また以前に異物を誤食した病歴がある患者では、異物摂取を繰り返すことが頻繁にみられます。

症状

異物の形態や摂取してからの時間により症状は様々ですが、嘔吐、腹部膨満、腹部痛、黒色便、吐血などを示します。鉛などの金属性異物を摂取した場合には痙攣などの神経症状を示します。

診断

X線不透過性の異物は単純X線検査で診断が可能です。X線透過性の異物は造影剤により輪郭が描出されることがあります。胃穿孔が疑わしい場合にはバリウム検査を行うことはできません。内視鏡検査により胃内異物の形態や胃粘膜の評価が可能で、そのまま異物を摘出することが可能な場合にもあります。

治療

胃内異物の多くは内視鏡で摘出可能ですが、サイズの大きいもの、内視鏡の鉗子で把持しにくい異物、幽門に固定され十二指腸へ進入してしまった線状異物、安全ピンや針、竹串など先端が鋭利で内視鏡で摘出すると胃食道粘膜の穿孔や損傷を起こす可能性がある異物などは外科的摘出を選択します。

  • 胃内異物(ゴムボール)

腸内異物

胃を通過した異物は腸閉塞の原因となります。症状や診断は胃内異物とほとんど同じですが、糸やストッキング、ロープなどの線状異物が腸内に停滞して起こる腸閉塞・通過障害は消化管穿孔を起こしやすく、腹膜炎や敗血症などの合併症発生率や死亡率が高いことが分かっています。犬と猫では病態や予後が異なり(Evans, JAAHA,1994)、犬では幽門部に異物が絡んでいることが多く、診断時に40%の患者で消化管穿孔が認められ、腹膜炎の合併や死亡する割合は猫の約2倍です。猫では、異物が舌の根元に絡まることが多く、通過障害など重篤な臨床症状を伴っていない発症初期段階では舌根部の異物を切離することで改善することがありますが、消化管穿孔の危険があるため外科的摘出が必要です。

症例:線状異物

アラスカンマラミュート、2歳半

  • 線状異物による腸閉塞、アコーディオン状に引き詰められた空腸
  • 線状異物により穿孔している腸管
  • 摘出した線状異物
  • 切除した腸管断端を縫合

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