日本小動物外科専門医のいる動物病院
乳び胸は胸管のリンパ流量の増加やリンパ管圧の上昇に伴い、胸腔内に乳び胸水が貯留する疾患です。
心臓病、フィラリア感染症、前縦隔腫瘤、肺葉捻転などの疾患では静脈血の心臓への流れが妨げられ静脈圧が高まる結果、乳び胸を発症します。外傷や先天的胸管奇形なども乳び胸の原因となります。
アフガンハウンド等のサイトハウンド、柴犬、シャム猫、ヒマラヤンは原因が特定できない特発性乳び胸の好発種として知られています。
乳び胸が慢性に経過すると胸膜の炎症反応によりフィブリンが析出して胸膜が肥厚する線維性胸膜炎を併発し、肺の拡張障害や癒着を生じ重篤な換気障害を起こします。線維性胸膜炎を併発すると予後不良と考えられています。
乳び胸水の貯留に伴い、元気食欲の低下、努力性呼吸、呼吸困難、発咳などを起こします。
胸部レントゲン検査では、胸水貯留による心臓陰影の不鮮明化、気管の挙上、肺の虚脱などが認められます。
胸水の生化学的検査および細胞学的検査により確定診断します。
典型的な乳び胸水は肉眼的に乳白色で胸水の中性脂肪値が血清と比較して高いことが多く、小型リンパ球や非変性性好中球が認められます。
食事療法、胸膜癒着術、胸腔穿刺法などの温存療法の治療成績はあまり良くなく、外科的治療として胸管結紮術、乳び槽切除術、心嚢膜切除術、胸腔腹腔シャント術、胸腔内大網固定術などが報告されています。
胸管結紮術単独での治癒率は犬で50%、猫で40%とされ、胸管結紮術と他の術式の併用で治療成績が向上すると報告されています。
ウィペット、避妊メス、3歳、体重11.0kg
前日からの嘔吐と頻呼吸を主訴に来院されました。
胸水の性状検査や心臓エコー検査などから、特発性乳び胸と診断しました。
定期的な胸水抜去や食事療法では胸水貯留に改善がみられませんでした。