日本小動物外科専門医のいる動物病院
中手骨および中足骨はそれぞれ人間の手と足の甲に相当する骨です。犬と猫の中手骨および中足骨骨折は交通事故、落下事故、飼い主に踏まれる、ドアなどに挟まれるなどの他、関節固定術の合併症として起こります。事故や外傷歴を聴取し、整形外科的検査と単純X線検査により診断します。靭帯損傷の併発を疑う場合にはストレス撮影を行います。
中手骨は5本、中足骨は4本存在しますが、中手骨および中足骨で主な体重負荷を担う第3および第4中手骨/中足骨が2本とも骨折した場合には外科的な治療を必要とします。第3および第4中手・中足骨以外の1〜2本の中手骨/中足骨骨折でかつ変位が少ないケースであれば外固定により治療することもありますが、外科治療と比べて変形癒合や癒合不全が頻発します。他の指針として、3本以上の中手骨/中足骨の骨折、第2または第5中手骨/中足骨底部の骨折、骨幹部や遠位での骨折、変位が著しい骨折、関節内骨折、開放骨折、大型犬や使役犬の骨折などでも外科的な治療が推奨されています。
中手骨/中足骨骨折治療に用いられるインプラントにはプレート、スクリュー、髄内ピン、創外固定などがあり、患者の年齢、サイズ、体重、骨折の部位や形態などに応じて最適な治療法を選択します。大型犬ではプレート法が使用されますが、小型犬あるいは猫など、適当なサイズのプレートが使用できない場合には、細いワイヤーを髄内ピンとして用い、その一端を創外固定に組み込みます。通常、術後4〜8週で全てのインプラントを除去し、その後一部の患者では3〜6週間ほど外固定を併用します。治療期間中は約4週間隔でX線検査により骨癒合の程度を評価します。当院では全ての患者で良好な骨癒合が達成され、とても有効な治療法と考えられますが、変形癒合や癒合不全、インプラントの緩み、骨髄炎、ピン刺入部からの浸出液、変形性関節症などが合併症として報告されています。
参考文献
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