日本小動物外科専門医のいる動物病院
ダックスフンドやビーグルなどの軟骨異栄養性犬種に多い胸腰部椎間板ヘルニア(ハンセンI型)は、深部痛覚を失う前に脊髄減圧術を行えば97~98%で神経症状が改善します(PMID: 23216037)。一方、パグの胸腰部椎間板疾患では、脊髄減圧術単独では神経症状が改善しない可能性があります(Fisher SC. J Am Vet Med Assoc 2013)。パグの椎間板疾患では、椎間板ヘルニア(ハンセンII型)に加えて脊椎関節突起の先天的な形成異常から生じる椎体不安定症が関与していることが近年の報告で明らかとなってきました。このような症例では通常の脊髄減圧術により椎体不安定症が悪化する可能性があります。
かねてから当院ではパグの椎間板疾患を診断する際に脊髄造影ストレス撮影やCT造影検査を行い、脊髄動的圧迫や関節突起の形成異常を確認した患者には通常の脊髄減圧術と併せて椎体固定術を行ってきました。椎体固定を行った当院の患者を追跡調査したところ、過去の報告と比較して良好な神経学的改善が認められました。
本疾患の画像検査や治療成績について、コーネル大学(米国)の神経科専門医と共同研究を行い、2020年のヨーロッパ獣医外科学会(ECVS: European College of Veterinary Surgeons)において研究内容を発表しました。2022年5月には英国小動物獣医師会の公式ジャーナルJournal of Small Animal Practice誌に論文が掲載されました(PMID: 35577348)。