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椎間板関連動的圧迫

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椎間板関連動的圧迫とは

椎間板ヘルニアの発症には椎間板の変性が関与していますが、椎間板の変性に伴い椎間板の強度低下や脊椎の不安定性を引き起こすことがあります。脊椎が不安定な状況では、脊椎がある特定の位置にあるときにのみ脊髄圧迫が生じる脊髄動的圧迫が引き起こされることがあります。このような病態を胸腰部椎間板関連動的圧迫といい、獣医学領域における診断や治療法についての詳細な記載はありませんでした。当院では、この病気に対する診断法や外科治療の成績をまとめ、2011年米国獣医外科専門医協会年次大会(シカゴ)、2012年欧州獣医外科専門医協会年次大会(スペイン)において発表し、2013年に米国および欧州の獣医外科専門医協会の公式ジャーナルVeterinary and Comparative Orthopaedics and Traumatologyに論文が掲載されました(PMID: 24008559)。以下に論文の内容を説明します。

疫学

2005年から2010年までの期間に診断、外科治療を行ったのは11頭で、ミニチュアダックスフンドやトイプードル、マルチーズ、ペキニーズ、パグ、フレンチブルドッグ、パピヨンなどの犬種が含まれます。年齢の平均値は4.7歳でした(範囲は5ヶ月〜10歳)。

症状

脊椎痛や両後肢の不全麻痺、ふらつきを呈することが多く、急性に発症することもあれば慢性経過をたどることもあります。

診断

椎間板関連動的圧迫は、通常のMRI検査や脊髄造影検査では診断できず、確定診断のためには脊髄造影ストレス撮影が必要です。この検査は、脊椎を屈曲・伸展させて脊椎にストレスをかけた状態で行う脊髄造影検査であり、特定の体位における脊髄圧迫の評価を行うことが可能です。11頭のうち9頭は伸展位、1頭は屈曲位、残りの1頭は伸展位および屈曲位ともに動的圧迫が認められました。

治療、予後、合併症

11頭全てで片側椎弓切除術と椎体固定術を行い、術前に歩行可能であった8頭は術後の歩行機能は維持され、歩行不可能であった3頭は、1ヶ月以内に歩行機能が回復しました。これらのうち2頭で、手術からそれぞれ8および18ヶ月後に実施したレントゲン検査において部分的なピンの破綻が認められましたが、神経学的な症状はありませんでした。

椎体固定術

椎間板関連動的圧迫に対する治療には通常の脊髄減圧に加えて椎体固定術が必要です。椎体固定にはピンと骨セメントを使用する方法やプレート法等があり、固定部位や固定強度に応じて決定します。本手術にはインプラント感染の危険性があるため、清潔な環境の手術施設が必要になります。

  • A:ニュートラルポジションでの脊髄造影検査。脊髄圧迫は認められない。 B:脊椎を伸展させ脊髄造影ストレス撮影をすると椎間板による脊髄圧迫を検出できる。C:片側椎弓切除による脊髄減圧および椎体固定

脊髄造影検査、CT検査、MRI検査などのストレス撮影を行わない従来の画像診断法では、静的な脊髄圧迫を起こす椎間板ヘルニアや、ニュートラルポジションで圧迫の存在する動的圧迫しか検出できません。ストレスポジションでのみ脊髄圧迫が認められる動的圧迫を診断するには脊髄造影ストレス撮影が必要であり、外科治療を行った全症例で長期間の神経学的改善が認められ、椎体固定を併用した片側椎弓切除術が胸腰部椎間板関連動的圧迫に対し有効な治療法であることが分かりました。

椎間板関連動的圧迫に関連する疾患・症例