日本小動物外科専門医のいる動物病院
骨盤骨折は交通事故や落下事故などの高エネルギー外傷により起こるため、気胸や肺挫傷などの胸部損傷、横隔膜ヘルニア、肝臓や脾臓の破裂に伴う血腹、膀胱破裂や尿管損傷に伴う尿腹、尿道裂傷、脊椎骨折、四肢骨折などを併発することがあります(図1)。
骨盤周囲に走行する坐骨神経の損傷による後肢の感覚異常や麻痺が生じることがあります。骨盤骨折治療の際には生命に危険を及ぼす併発症の治療を優先します。骨盤骨折に続いて筋拘縮や軟部組織の線維化が起こるため、受傷後7-10日以内の治療が推奨されています。
骨盤は箱状の構造で、2箇所以上の部位で骨折すると骨盤の変位が起こります。外科治療が必要となるのは、①腸骨体の骨折(図2)、②寛骨臼の骨折(図3)、③仙腸関節の脱臼(図2)です。
患者の体重、年齢、骨折部位や骨折の形状に応じてプレート、スクリュー、ピン、ワイヤーなどにより固定します(図4)。
多くの骨盤骨折では恥骨や坐骨の骨折を伴いますが(図5)、腸骨体、寛骨臼、仙腸関節が安定化されれば負重が可能になるため、それらの固定は必須ではありません。
骨盤腔には消化器系、泌尿器系、生殖系臓器があり、骨盤骨折の変形癒合や癒合不全により骨盤腔が狭窄すると、便秘(図6)、排尿困難、難産が起こる可能性があります。