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胸腰部椎間板ヘルニアQ&A

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椎間板ヘルニアの発症に関与する椎間板変性には犬種による特徴があり、犬種によっては椎間板ヘルニアを起こすだけでなく椎間板の強度低下や脊椎の不安定性を起こすことがあります。脊椎が不安定な状況では、脊椎が特定の位置において脊髄圧迫が悪化する脊髄動的圧迫が起こることがあります(椎間板関連動的圧迫、脊椎不安定症)。 このような椎間板の変性に伴って起こる疾患を総称して「椎間板疾患」と呼びます。

Q1. 椎間板疾患を診断する画像検査は脊髄造影CT検査とMRI検査のどちらが有利ですか

脊髄造影CT検査とMRIはいずれも椎間板疾患を診断できます。脊髄造影CT検査とMRIそれぞれの長所と短所を踏まえて各症例に適した診断方法を決定します。

  • 過去に椎間板疾患の症状を起こしたことのない若齢のダックスフンドやビーグルなどの単一の椎間板ヘルニアは脊髄造影CT検査とMRIのどちらでも診断できます。
  • 過去に症状を起こし複数の病変がある場合、どの病変が責任病変かをMRIでは判定しにくいことがよくあります。脊髄造影CT検査は複数の病変の中から責任病変を特定しやすい特徴があり、MRIよりも有利です。
  • トイプードル、チワワ、ヨークシャーテリア、ポメラニアン、ミニチュアピンシャーなどに多い脊髄動的圧迫や、フレンチ・ブルドッグ、パグ、ペキニーズなどの犬種における椎骨の奇形に関連した脊椎不安定症の評価はMRIではできないため、脊髄造影ダイナミック検査で診断します。
  • 腫瘍、炎症、梗塞などの椎間板疾患以外の診断にはMRIが有利です。
    これらの疾患の多くは犬種、年齢、病歴、発症様式、症状などにより椎間板疾患とは区別できますが、これらの疾患を疑う、または除外する必要性が高い場合にはMRIを実施します。

重症の椎間板疾患では診断、治療の迅速性が重要です。MRIは全身麻酔での検査に1〜2時間かかり迅速な治療ができないため、緊急治療の必要な重症例では脊髄造影CT検査を選択することがあります。
当院では脊髄造影CT検査による確定診断と外科専門医による手術を約40-60分の麻酔で実施します。

Q2. 胸腰部椎間板ヘルニアの治療方針はどのように決めますか

重症度、年齢、持病等の麻酔リスクを考慮して治療方針を決定します。

  • 脊椎痛や軽度の後肢ふらつき(グレード1、2)
    ケージレストや鎮痛薬などの内科治療 (*) で一時的に症状が改善することがあります。
    強い痛みが改善しない、痛みの再発を繰り返す、ふらつきが悪化する場合には外科手術をお勧めします。
  • 完全な麻痺はないが後肢が立てず歩けない(グレード3)
    外科治療をお勧めします。
    症状が一時的に改善しても重度の椎間板物質による脊髄圧迫が完全に消失することはなく、慢性的な脊髄障害の原因となることがあります。残存した椎間板物質が更に逸脱して再発する可能性も高く、その時期や重症度は予測できません。 
  •  両後肢の完全麻痺(グレード4、5)
    緊急手術をお勧めします。深部痛覚を完全に消失したグレード5の症例では、深部痛覚を完全には消失していないグレード4の症例に比較して歩行機能の回復率が極端に低下します。
  • 椎間板疾患は病状の進行が予測可能な他の疾患と違い、急速に悪化し回復のチャンスを逃してしまう恐れのある疾患です。当院での椎間板疾患の治療症例の25%はグレード5で、それらの多くは内科治療中、または一時的に改善した症状が再発して重症化し再来院される症例です。

(*)内科治療について

内科治療にはケージレストと鎮痛薬があります。鎮痛薬は、痛みを緩和する程度の働きはありますが、脊髄機能を回復させる直接の作用はありません。副作用として嘔吐や下痢がよく起こり、稀に膵炎などの深刻な問題が起こるため当院では推奨していません。

飼い主様へ

椎間板ヘルニアはよく知られた病気であるため、正しい情報と誤った情報が混在しています。当院では外科の専門施設として多くの椎間板疾患の治療機会に恵まれ、これまでの経験に基づいた適切な診断・治療法をご提案いたします。ご不明な点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。