電話
03-5988-7888
FAX・時間外救急電話
03-5988-7887
MENU

椎体不安定症(Vertebral instability)

椎体不安定症とは

脊髄圧迫病変は、脊椎の動きによって圧迫の程度が変化しない脊髄静的圧迫(Static compression)と、脊椎の屈曲伸展などの動きによって圧迫の程度が変化する脊髄動的圧迫(Dynamic compression)に分類されます。ハンセンI型椎間板ヘルニアや椎体腫瘍などの脊髄疾患は、圧迫の原因が脊柱管内の占拠性病変であり脊椎の動きにより圧迫の程度が変化しない静的圧迫病変です。一方、軟骨異栄養性犬種の変性した不安定な椎間板髄核がハンセンI型椎間板ヘルニアを起こす前の初期病変、ハンセンII型椎間板ヘルニアのうち突出した線維輪が石灰化などにより固まるまでの初期病変、先天性脊椎奇形による不安定症、環軸椎不安定症、椎間板関連ウォーブラー症候群、腰仙椎不安定症、パグの関節突起形成異常などの脊髄疾患の多くは、椎体の動きにより圧迫の程度が変化する動的圧迫病変です。これらの動的圧迫病変がみられる疾患を総称して椎体不安定症(Vertebral instability)と呼び、当院では様々な椎体不安定症の診断、治療、予後などについて研究・報告してきました。

古くから神経専門医によって研究が進められてきた代表的な椎体不安定症としてウォーブラー症候群があり、この病気は椎体不安定症の病態を理解するために良いモデル疾患となります。中高齢のドーベルマン・ピンシャーに好発する椎間板関連ウォーブラー症候群では、椎間板の変性に伴い椎体の不安定性が慢性化し、黄色靭帯、背側線維輪、関節包などの軟部組織が肥厚した結果、尾側頸髄の動的圧迫を起こし脊髄が反復的に障害されます。

椎間板変性が関連した他の病気として椎間板ヘルニアや椎間板関連動的圧迫、変性性腰仙椎狭窄症などがあり、一部の病気では椎体の不安定性が悪化して椎体亜脱臼を起こすこともあります。しかし全ての椎間板変性が必ずしも臨床症状を起こすわけではなく、椎間板変性の遺伝的素因や先天性脊椎奇形などの様々な要素により発生頻度や重症度は動物によって様々です。臨床症状が無いまま椎体の不安定性が慢性化した結果、高齢の動物に変形性脊椎症が認められることもよくあります。

診断

脊髄動的圧迫を伴う椎体不安定症では、通常の脊髄造影検査に加えて、脊椎の屈曲方向を変化させたり牽引したりして圧迫病変の変化を評価するDynamic studyを実施する必要があります。
脊髄造影検査、CT検査、MRI検査などのDynamic studyを行わない従来の画像診断法では、静的な脊髄圧迫を起こす椎間板ヘルニアや、ニュートラルポジションで圧迫が存在する動的圧迫病変しか検出できません。
Dynamic studyはMRIやCTでも理論上可能ですが、特定の方向にストレスをかけ続けた状態で長時間の撮影を実施しなければならず、脊髄障害を悪化させる可能性が極めて高いため現実的ではありません。

  • A. 中立位、B. 伸展位、C. 屈曲位。伸展位で脊髄圧迫が悪化する脊髄動的圧迫が存在する。

治療

椎体不安定症では、通常の脊髄減圧術に加えて椎体固定術が必要です。椎体固定術を伴わない脊髄減圧術は、椎体不安定症を悪化させるリスクがあります。椎体固定術には、ピンと骨セメントを使用する方法やプレートとスクリューを使用する方法などがあり、固定部位や固定強度に応じて決定します。

関連リスト