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腹膜心膜横隔膜ヘルニアの猫 Mちゃん

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患者紹介

スコティッシュ・フォールド、避妊雌、3歳齢、体重3.3kg。
後肢跛行を主訴にホームドクターを受診し、X線検査にて偶発的に腹膜心膜横隔膜ヘルニアが疑われたため、当院を紹介受診しました。

診断

身体検査時の聴診では、心音は不明瞭でした。

  • X線検査

横隔膜ラインが不明瞭であり、心臓尾側領域より腹部にかけて軟部組織陰影が検出されました。また、全体的に拡大した卵円形の心陰影や心膜腔内に消化管内ガス陰影も検出されました。

  • CT検査

CT検査はX線検査、超音波検査より詳細に周囲組織との関係性や、他の先天性疾患の有無を評価できるため、手術計画を立てるうえで重要な検査です。

本症例では、右および中央肝区域の肝臓および胆嚢、空腸の一部が心膜腔内へ脱出していました。脱出した肝実質の造影増強効果は、腹腔内の肝実質と同程度であり、明らかな血流障害を示す所見は認められませんでした。その他、先天性疾患は認められませんでした。

  • 患者の術前動画

治療

剣状突起から臍まで腹部正中切開によるアプローチにより、ヘルニア整復術およびポリプロピレンメッシュを用いた横隔膜再建を実施しました。

肝臓、胆嚢、鎌状間膜脂肪および空腸の一部が、横隔膜欠損部を介して心膜腔内へ脱出しており、用手的に腹腔内へ整復しました。脱出臓器に明らかな癒着または壊死は認められませんでした。CT検査時と比較して、術中にはより広範囲の肝臓が心膜腔内へ脱出していました。このことから、心膜腔内への臓器の脱出程度は固定されたものではなく、体位や腹腔内圧などの影響により変化する可能性が考えられました。
横隔膜腹側正中に菲薄な膜様組織を伴う不完全なヘルニア孔を認めたため、薄い膜状組織は切離し、欠損部をポリプロピレンメッシュで被覆してポリプロピレン縫合糸で周囲組織に固定し横隔膜を再建しました。また、剣状突起近傍から心膜腔内へチューブを設置しました。

  • ヘルニア孔全体像
  • 脱出していた臓器を腹腔内へ返還
  • ヘルニア孔をポリプロピレンメッシュで閉鎖
  • 心膜腔内にドレーンチューブ設置

術後1時間ごとに心膜腔内に留置したチューブを介して空気や液体成分を抜去し、経過に問題がないことを確認した上で、術後4時間のタイミングでチューブを抜去しました。経過は良好で術後6日で退院しました。

術後経過

術後1.5カ月経過した現在では、一般状態は良好で、合併症なく元気に過ごしているようです。

  • 術後X線検査

横隔膜ラインは明瞭であり、心陰影は正常の大きさでした。

コメント

腹膜心膜横隔膜ヘルニア(PPDH)は、症状を示さず偶発的に発見されることもある先天性疾患ですが、脱出臓器の種類やその程度によっては、呼吸器症状や消化器症状などを呈することがあります。本症例では明らかな臨床症状は認められませんでしたが、肝臓全体を含む複数の腹腔内臓器が心膜腔内へ脱出していました。
PPDHでは脱出臓器や横隔膜欠損部の状態が症例ごとに異なるため、CT検査などによる詳細な術前評価を行い、それぞれの症例に応じた治療方法を検討することが重要です。本症例ではヘルニア孔が比較的大きかったことから、ポリプロピレンメッシュを用いて横隔膜を再建し、術後は良好な経過で退院しました。

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