日本小動物外科専門医のいる動物病院
股関節形成不全は股関節に変形性関節症が起こる疾患で、慢性的な痛みが原因となり運動機能の低下や、跛行がみられます。
この疾患の発症には遺伝的因子が関連していることが知られ、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、ジャーマンシェパードドッグ、シベリアンハスキー、セントバーナード、ロットワイラー、グレートピレネーズ、バーニーズマウンテンドッグなどの犬種に頻発することが動物の整形外科財団(Orthopedic Foudation for Animals:OFA)によって調査されています。(OFAの犬種別発症頻度の詳細はこちら)
股異形成の発症には遺伝的因子のほかに運動レベル、体重などの環境的因子が関与していることが知られています。
股関節形成不全に対する治療法は犬の年齢、臨床症状の重症度、犬の活動性、飼い主の要望などをふまえ決定します。それぞれの患者で生活スタイルや要求される運動レベルが異なり、痛みに対する耐性も様々です。
ワーキングドッグや将来高い運動性が期待される犬では、症状が軽度でも積極的な治療を求めることがあります。一方、レントゲン検査では重度の骨関節症を示すのに臨床症状を示さず、積極的な治療を必要としない患者もいます。
股関節形成不全の治療はそれぞれの患者に応じて適切な処置が異なるため、レントゲン検査のみで治療法を決定するものではありません。
股関節形成不全の原因は遺伝的因子に加えて、患者の急激な成長、体重、活動性などの後天的、環境因子が関与していることが知られています。これらの後天的、環境因子の関与を最小限にすることが全ての股異形成患者に重要です。
股関節形成不全の全ての患者で最初に保存療法として体重制限、運動管理、抗炎症剤の投与を行います。過度の肥満は持続的に全ての肢の関節に負荷を加えるため、体重制限は股関節形成不全を治療する目的だけでなく、他の関節にかかるストレスを軽減するためにも重要な治療法です。関節にストレスを加える激しい運動を避け、適度の筋肉運動を計画します。
ゆっくりとした長距離の歩行や水泳は関節への負担が少ない理想的な運動です。