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無麻酔歯石取りによる下顎骨骨折を治療したAちゃん

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  5. 無麻酔歯石取りによる下顎骨骨折を治療したパピヨン Aちゃん

患者紹介

パピヨン、避妊雌、5歳
前日の無麻酔歯石取りの後から、口が閉じられないという主訴で来院しました。

診断

口を閉じることができず口腔内出血が見られました。下顎は不安定で、X線検査では両側の下顎体骨折が確認できました。

  • X線検査
  • 両側下顎体骨折
  • CT検査
  • 詳細な骨折の評価を行う

治療

全身麻酔および下顎のブロック鎮痛を行い、アクリル樹脂と陽性ネジピンを用いた創外固定術を行いました。併せて骨折に関連して緩んだ歯の抜歯と歯石除去を行いました。

  • 創外固定の様子
  • 術後X線検査
  • 術後の外貌

術後経過

骨の癒合を確認して、3ヵ月後に全てのインプラントを除去しました。
不正咬合や感染、癒合不全、再骨折などの合併症も認められず現在は骨折事故以前と変わらない生活を送っています。

  • X線検査(インプラント除去直後)
  • 抜去1ヵ月後
  • ピンの穴が埋まり十分な骨癒合も確認できる
  • 抜去1年後
  • 1年後の外貌
  • 骨折事故以前と変わらずとても元気です

無麻酔歯石取りについて

無麻酔での歯科処置はアメリカ獣医歯科学会をはじめ国内外複数の団体によって、危険で不適切な行為であると注意喚起されています。近年、無資格者や一部の獣医師による麻酔をかけずに行ういわゆる “無麻酔歯石取り” による弊害が多発しています。獣医師以外による動物の口腔内への施術は法律的にも認められていません。患者の状態を正しく評価せずに無麻酔で長時間動物を押さえつけて実施する歯科処置は動物に恐怖や苦痛を与えるだけでなく、十分な歯科処置ができない上に非常に危険です。

安全に適切な歯科処置を行うためには麻酔下にて施術を行う必要があります。麻酔は決して 100%安全とは言い切れませんが、適切な麻酔管理や術前検査によって麻酔リスクは限りなく小さくすることができます。動物の年齢や性格、持病の有無などの情報だけでは歯石取りや麻酔のリスクは判断できません、術前検査(血液検査、レントゲン、超音波検査など)によって当日の健康状態や持病の重症度などを詳細に評価することが重要です。持病を持つ高齢動物でも、検査結果に基づいて麻酔薬を選択したり起こり得るリスクを予測し予め対策・準備するなど適切な麻酔管理を行えば多くの場合安全な歯科処置が可能です。

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