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尾側頸椎‐胸椎の先天性奇形による脊椎不安定症を伴う脊柱管狭窄症のMちゃん

  1. 専門分野
  2. 脳神経外科
  3. 先天性椎骨奇形
  4. 尾側頸椎‐胸椎の先天性奇形による椎体不安定症と脊柱管狭窄症の猫 Mちゃん

患者紹介

ミヌエット、13ヶ月齢、雌、体重1.8kg
11ヶ月齢時に後肢のふらつきを主訴に紹介来院し、飼い主様の希望で経過観察していましたが、2日前から急に後肢が立てず、前肢も重度にふらつくようになったと再来院されました。

診断

  • 神経学的検査

・歩様:四肢不全麻痺(前肢は支えがあれば数歩の歩行は可能だが、自ら起立できない。後肢は歩行不可能)
・姿勢反応:四肢で低下
・脊髄反射:四肢で正常
・脳神経:正常
・病変の局在:T3-L3脊髄分節

  • X線検査
  • C2-3、C6-7、C7-T1、T1-2、T2-3椎間の変形性脊椎症があり、慢性的な椎体不安定症の存在が疑われる。13ヶ月齢時のX線写真では11ヶ月齢時と比較し、変形性脊椎症が進行している。
  • 血液検査

高グロブリン血症、肝酵素上昇

猫伝染性腹膜炎を除外するため、脳脊髄液検査とMRI検査を行いました。

  • 脳脊髄液検査

細胞数と蛋白濃度は正常でした。

  • MRI検査
  • MRI画像診断所見から、T1-T5椎体上の炎症性疾患の可能性も考えられましたが、脳脊髄液検査を含めた総合的評価により猫伝染性腹膜炎や他の炎症性疾患の可能性は低いと考え、椎体奇形による椎体不安定症を疑い脊髄造影検査、脊髄造影ストレス撮影、脊髄造影CT検査を実施しました。
  • 脊髄造影検査、脊髄造影ストレス検査
  • 上から順に中立位(Neutral)、伸展位(Extension)、屈曲位(Flexion)の脊髄造影ストレス撮影像。中立位と屈曲位でみられる脊髄圧迫病変が伸展位で悪化する脊髄動的圧迫病変が認められる。クモ膜下腔を描出する背側および腹側の造影ラインのうち、腹側のラインが消失している。
  • 脊髄造影CT検査
  • T1-T4椎体レベルの脊髄圧迫病変があり、脊椎を屈曲・伸展させてX線撮影する脊髄造影ストレス検査の結果、脊椎を伸展させた際の圧迫病変が悪化する脊髄動的圧迫病変がありました。

治療

T1-T2、T2-T3、T3-T4椎間の片側椎弓切除術と椎体固定術を行いました。

  • 術後X線検査

術後経過

手術から2週間後には後肢の歩様が改善していました。

本症例のCase reportがJournal of the American Animal Hospital Associationに掲載されました(PMID: 38394696)。

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