日本小動物外科専門医のいる動物病院
フレンチブルドッグ、パグ等の短頭犬種の多くやトイ犬種の一部は生まれつき椎骨奇形を持ちます。椎骨奇形の多くは、片側椎骨や蝶形椎骨と呼ばれていましたが、現在はその形態によって細かく分類されています。
椎骨奇形では、椎骨の連結が異常である不正配列や脊椎が弯曲する角度形成異常(背弯症、側弯症)が認められ、結果的に脊柱管狭窄や脊椎不安定症を起こします。
先天性椎骨奇形による脊髄障害は、生誕時に見られるもの、成長期に悪化するもの、成長後に椎体不安定症の悪化と関連して悪化するものなどがあり、その多くは脊柱管狭窄と椎体不安定症が複合するものです。
椎骨の変形と神経学的悪化を防ぐために適切なタイミングで適切な治療が必要です。
パグの一部には、脊椎を連結する関節突起の先天的奇形のために椎骨の不安定症や脱臼を起こすものがいます。(パグの胸腰部椎間板疾患)
重度の椎骨奇形を伴う背側弯症の患者では、椎骨が複雑に弯曲しているためにMRIなどの断層画像では脊髄圧迫の正確な評価が困難です。確定診断には脊髄全体を確認し、多発病変の検出と程度の把握、椎間板疾患等の併発疾患の評価も可能な脊髄造影検査を選択します。また、椎骨奇形に関連する脊髄動的圧迫を評価するためには脊髄造影ストレス撮影検査が必要です。
先天性椎骨奇形による典型的な脊髄障害は脊柱管狭窄と椎体不安定症が複合するもので、脊髄減圧と椎体固定を組み合わせて治療します。
これまで本疾患の治療は困難であると考えられ、効果的な治療の報告はありませんでした。しかし、当院での脊髄減圧術と椎体固定術を併用した外科的治療を受けた多くの犬が歩行機能を回復しており、先天性椎骨奇形による脊髄障害に対する優れた治療法として、2006年の獣医麻酔外科学会ならびに米国獣医外科専門医協会年次大会(ワシントンD.C.)などの国内外の神経外科学会において発表し、2007年には獣医外科学の最高権威であるジャーナル Veterinary Surgery に掲載されました。2008年の獣医麻酔外科学会をはじめ、本法の教育講演も行っています。
さらには欧米の獣医神経病学の成書とされている A practical Guide to Canine & Feline Neurology 等にも紹介されています(PMID: 17614924)。