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尿石症・尿路結石(Urolithiasis / Urinary stone)

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尿石症/尿路結石(腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石)とは

尿石症(尿路結石)は泌尿器官に結石が生じた状態を表し、犬や猫の排尿障害や腎機能障害を引き起こします。結石形成は食事や細菌性尿路感染症、門脈体循環シャントなどの疾患、遺伝的要素などと関連し起こります。
尿石症は、結石が生じた部位や結石の成分によって分類します。

部位による分類
上部尿路結石
・腎結石
・尿管結石
下部尿路結石
・膀胱結石
・尿道結石
成分による分類
・ストラバイト(リン酸マグネシウムアンモニウム)
・シュウ酸カルシウム
・尿酸塩
・シスチン
・シリカ など

原因や関連した疾患、尿のpH、結晶・結石の形態、画像検査所見、好発犬種などがそれぞれ異なります。犬猫共にストラバイト結石とシュウ酸カルシウム結石がそれぞれ約半数を占めます。

  • ストラバイト結石(リン酸マグネシウムアンモニウム)

犬の尿路結石の50%、猫では30%ほどを占めます。尿路感染する細菌の酵素作用は尿のpHを上昇させ、ストルバイト結晶の溶解を妨げます。膀胱の内膜の損傷/炎症は尿中の有機物増加につながり、結晶化を促進します。小さな結石は療法食を用いた内科治療により溶解する可能性があります。

  • シュウ酸カルシウム結石

犬の結石の35%、猫の結石の50-70%を占めます。猫の腎結石や尿管結石の70%はシュウ酸カルシウムと診断されます。酸性環境(低pH)の尿中で結石が形成されやすく、ストラバイト結石形成に配慮したフードの普及に伴い発生が増加していると言われています。シュウ酸カルシウム結石は食事療法で溶かすことができません。特に猫の尿管結石の治療および予防は難しいとされており、治療法の決定には細心の注意が必要です。

  • 尿酸塩結石

門脈体循環シャントの患者では特徴的な尿酸アンモニウム結石が認められます。ダルメシアンは遺伝的に肝臓での尿酸代謝が悪く尿酸結石を頻繁に発症します。尿酸結石は、X線透過性を示すため単純レントゲン検査では確認できません。

  • シスチン結石

尿細管輸送の遺伝障害が原因と考えられています。酸性環境(低pH)でシスチンが高濃度になると結石が形成されます。3-6歳のオスのダックスフンドに好発します。シスチン結石は単純X線検査では確認できません。

  • シリカ結石

ケイ酸塩、ケイ酸、およびケイ酸マグネシウムの摂取量との関連性が示唆されており、水道水や井戸水に原因物質が多く含まれる一部の地域(鹿児島などの火山地帯)では比較的発生が多い傾向があるようです。

症状

下部尿路症状
・血尿
・努力性排尿、有痛性排尿
・頻回少量の排尿
・腹部の不快感
・失禁、不適切な場所での排尿
結石により尿道閉塞を引き起こす可能性があります。
尿道閉塞の症状
※動物が下記の症状を示している場合は、緊急治療が必要となる可能性があります。
・尿滴下(尿漏れ)
・排尿姿勢を取りいきむが尿が出ない
閉塞後24時間以上が経過すると尿毒症の症状(無気力、食欲不振、嘔吐、不整脈、低体温、発作など)が認められるようになります。
上部尿路症状
腎臓と尿管(腎臓と膀胱を繋ぐ尿路)における結石は腎障害(腎不全、腎盂腎炎など)や尿管閉塞などを引き起こす可能性があります。尿管閉塞では尿が腎臓内に停滞し、水腎症と呼ばれる状態に陥ることがあります。

診断

始めに尿検査を行い、尿のpHや尿中の細菌・結晶の有無などを評価します。腎不全や尿毒症の患者では血液検査や心電図に異常が認められることがあります。
尿石症の画像診断にはX線検査と超音波検査が一般的に使用されます。単純X線で確認できない結石の場合、造影剤や空気を用いたX線撮影を行うこともあります。2mm以下の小さな結石はX線では描出できません。超音波検査は腎臓、尿管、膀胱の描出に優れていますが尿道の評価には不向きです。

  • 尿検査で確認できるストラバイト結晶、尿中に細菌感染も認められる
  • 膀胱内に2個の結石が認められる
  • 膀胱、尿道内に多数の結石が認められる
  • 逆行性尿路造影により金平糖状の結石が描出されている
  • 腎結石

治療

  • 内科治療

シュウ酸カルシウム、尿酸塩、シスチン、シリカ結石は内科治療により溶解できず、外科治療が必要です。ストラバイト結石は療法食により溶解する場合がありますが、療法食の多くは長期的な使用には向きません。結石が小さく閉塞を伴っていない場合には食事療法と併用して内科治療(輸液や抗生剤、利尿剤、平滑筋弛緩薬など)を行うことがありますが、内科治療を行っている期間は頻繁に検診が必要です。内科的治療を開始しても症状が改善せずに短期間(平均2日)で外科治療が必要となる事が多く(Andrew E Kyles, 2005, JAVMA)、内科的治療の限界が認識されています。

  • 尿道閉塞の緊急治療

尿路閉塞には緊急治療として迅速な閉塞の解除や膀胱穿刺が必要となります。尿道に留まった結石が閉塞を起こしている場合には、カテーテルを用いて外尿道口から高い水圧をかけて一時的に膀胱内に結石を押し戻すこともあります。

  • 外科治療

切開術(腎切開、尿管切開、膀胱切開など)や尿道瘻造設術(会陰尿道瘻造設術陰嚢尿道瘻造設術など)、吻合術などの術式を選択します。雄猫の尿道結石では会陰尿道瘻造設術がしばしば選択されます。
尿管結石の治療として尿管切開術がありますが術後合併症が比較的多く発生することから、近年では尿管ステントや腎臓膀胱バイパス術(SUBsystem)などの方法が用いられています。ステントやバイパスを行う際には、感染、尿道閉塞の有無や手術前の腎臓機能を評価することが重要で、これらの治療も一定数の合併症が生じることが知られています。
腎切開術、尿管切開術、尿管ステント留置術、腎臓膀胱バイパス術、尿道切開術、尿道瘻造設術は比較的難易度の高い治療の為、欧米では外科専門医による執刀が推奨されています。

術後管理と予後

術後に再閉塞が生じる可能性があるため、退院後もしばらくは排尿や一般状態の確認が必要となります。尿道瘻造設術を行った患者では手術部位への自己外傷を防ぐためのエリザベスカラーの着用などが必要です。
手術後にも結石は再発する可能性があります。再発の予防は特に重要で、摘出した結石の成分を元に特定の食事摂取と定期的な尿のモニタリング、および原因疾患に対する治療を行います。いずれの結石においても予防には飲水量を増やすことが重要であり、獣医師の指導の元自宅での食事内容や飲水及びトイレの環境を見直す必要があります。

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