日本小動物外科専門医のいる動物病院
前十字靭帯は脛骨の前方変位を抑制しており、靭帯が断裂すると脛骨に負重が加わった際に脛骨が過度に前方へ移動します。この脛骨前方推進力は脛骨高平部の傾斜角に比例して大きくなるため、脛骨近位を骨切りおよび回転させて傾斜角度を矯正した状態で専用のインプラントにより固定し、脛骨の推進を制御することがTPLO手術の目的です。体重負重時の脛骨の前方突出は下方への関節圧迫に置き換えられ、損傷した前十字靭帯が修復されなくても疼痛や跛行の症状を改善させます。
適切に撮影したレントゲン画像をもとに、TPA測定、骨切りの位置およびソーブレードを確認し、適切なインプラントを選択します。
TPLOは当初は中型、大型犬に対する治療法でしたが、近年では体重2-3kgの超小型犬や猫用のTPLO用インプラントも開発され、様々な形態、サイズ、素材のものがあります。当院では概ね5 kg前後の小型犬〜大型犬にはSynthes製TPLOプレートを、2-3 kg前後の超小型犬にはintrauma社のfixinロッキングプレートを使用しています。
膝関節内にアプローチし、断裂した前十字靭帯の遺残物を除去します。慢性の前十字靭帯断裂、とりわけ完全断裂では頻繁に内側半月板の後方角の損傷を併発しています。損傷した半月板は手術後に跛行が持続する要因となるため切除します。
温存された半月板が術後に損傷して跛行が再発するのを予防するために、半月板の一部を除去、あるいは切離(リリース)することがあります。
ジグピンおよびジグを装着した後にソーブレードを用いて脛骨を放射状に骨切りします。
脛骨骨切り部を目標とする角度まで回転させたところで仮固定します。
仮固定された骨片を、TPLOプレートにより固定します。
TPLOの合併症には術創の感染や離開、膝蓋靭帯の肥厚、脛骨や腓骨の骨折、半月板損傷などがあり、合併症発生率は概ね20-30%と報告されています。両側同時にTPLOを行なうと合併症発生率が高くなると報告されており、通常は1〜2ヶ月ほどの間隔を空けて片方ずつ手術を行います。多くの合併症は内科的に管理できます。
跛行スコアやX線写真での骨関節炎所見、飼い主様による評価などの主観的評価、およびフォースプレート解析などの客観的評価により、TPLOの術後結果は良好であることが報告されており、従来の関節外縫合法と比較して、より早期の機能回復が期待できます。