日本小動物外科専門医のいる動物病院
胆嚢破裂は胆石症や胆嚢粘液嚢腫、壊死性胆嚢炎などに続発して発生することが多く、胆嚢や胆嚢管が破れて胆汁が漏出し胆汁性腹膜炎を生じます。
嘔吐、元気消失、腹部膨満、腹痛、発熱など非特異的なものが多く、腹水に細菌感染を伴わない場合には、診断されるまで時間がかかる傾向があります。
血液検査では肝酵素の異常やビリルビン値の上昇が認められます。胆汁性腹膜炎ではWBCやCRPが上昇します。超音波検査にて胆嚢の破裂や腹水が確認できることもあり、腹水中ビリルビン値が血清値より2倍以上高ければ胆汁漏出は確定的です。採取した腹水は細菌培養検査および抗生剤の感受性試験を行います。
胆嚢破裂は緊急外科適応疾患です。動物の状態を安定させ開腹手術を行い胆嚢の状態や閉塞の有無に応じて再建術や胆嚢切除、胆嚢十二指腸吻合術、胆管ステント留置術などを行います。術後はDIC・膵炎などの合併症に注意し術後管理を行います。感染性胆汁性腹膜炎に対しては細菌培養検査、感受性試験に基づいた抗生物質を投与します。現在は開放性腹腔洗浄の有効性は低いとされており、手術時に腹腔内持続吸引ドレーン(J-Vac system)を設置します。
胆汁性腹膜炎の生存率(約50%)は低く、さらに腹水の細菌感染やWBC上昇が認められる患者ではより低い(27%)ことが知られています。術前の状態や術後合併症の有無によっても予後は大きく左右されるためより速やかな診断と治療が必要です。周術期を乗りこえれば長期的な予後が期待できます。