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Free-form multiplanar type II創外固定法

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  5. Free-form multiplanar type II創外固定法の特徴

Free-form multiplanar type II創外固定法について

相川動物医療センターでFree-form multiplanar type II創外固定法により治療した小型犬の橈尺骨骨折119頭140肢の治療成績や予後についてまとめた論文が2019年にVeterinary Surgery誌に掲載されました。
全ての症例で骨癒合と機能回復が認められ、小型犬の橈尺骨骨折の治療方法として優れていることが分かりました。
この論文は2018年1月から2019年12月までの間にVeterinary Surgery誌で最もダウンロードされた論文の1つとして認定され(こちらを参照)、小型犬の橈尺骨骨折治療の1つのエビデンスとして世界中で認められています。
Clinical outcomes of 119 miniature- and toy-breed dogs with 140 distal radial and ulnar fractures repaired with free-form multiplanar type II external skeletal fixation

Free-form multiplanar type II創外固定法の特徴

創外固定法は固定フレームの形状や材料に応じて様々なシステムが使用可能です。一般的に使用されているリニア型やサーキュラー型などのシステムでは、骨に挿入したピンを連結バーとクランプで固定しますが、これらの方法はピン挿入時に角度や平面が制限されることが欠点です。ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル樹脂をフレームとして用いたFree-form創外固定法では、ピンの挿入箇所や方向、角度、サイズなどがフレームやクランプなどに制限されず、あらゆる角度や平面でピンを挿入できます。PMMAは可塑性があり、異なる角度・平面から挿入したピンをそのまま固定するため、結果としてピンと骨、ピンとフレームの引き抜き強度が増加し、フレーム全体の剛性が高まります。ピンの挿入方法に制限がないため、小さい骨片に対して複数のピンを自由に挿入でき、プレートを適用しにくい症例にも有効です。

  • Multiplane, multiangleに設置したピン

創外固定法は連結バーの数・配置によりフレーム形状が分類されています。一般的に、フレームがピンの一方にのみ設置されていれば片側性(ハーフピン)、両側に設置されていれば両側性(フルピン)と呼び、さらにピンとフレームにより構成される平面の数が1つであればuniplanar、2つであればbiplanar、多平面であればmultiplanarと呼びます。これらの組合せによりtype I、type II、type IIIなどに分類されます。相川動物医療センターでは、多平面(multiplanar)に挿入したピンの両側に2つのPMMAフレームを設置(type II)しており、Free-form multiplanar type II創外固定と呼んでいます。Type IIフレームはtype Iやtype Ibフレームと比較して曲げ剛性に優れており、強力な固定が可能です。

  • 2つのPMMAバーを設置したtype IIフレーム

創外固定治療の際に、筋肉、神経、血管などの軟部組織に全く干渉することなくピンを装着できるsafe corridorは、橈骨では遠位3分の2の内側面に限定されます。小型犬の橈骨は頭側に湾曲し頭尾側方向に扁平な構造をしているため、内側面へのピン挿入が困難な場合があります。そのため、骨幅に余裕のある頭側面よりピンを挿入し、軟部組織障害を最小限にするためスムースピンを使用しています。橈骨神経や橈側皮静脈、総指伸筋・橈側手根伸筋の筋腹などの重要な軟部組織は避けるようにフルピンとしてピンを挿入し、PMMAフレームをtype IIにしてスムースピンによる骨把持力の低さを補い、フレーム全体の剛性を高めています。最近位のピンは橈骨神経や前腕近位の筋群を避けるため、橈骨近位3分の1付近に挿入します。
近年の骨折治療は生物学的骨癒合が重要視されています。Free-form multiplanar type II創外固定法はアプローチを最小限にしているため、組織侵襲が少なく血液供給や血腫の温存につながります。小さい切開創において目視下で整復位を確認しながらフレームを固定するため、ほとんどの症例では良好な整復位・アラインメントが達成可能です。術後に角度異常などが認められた場合には、骨折部を架橋しているPMMAフレームを電動ギプスカッターなどで切断し、矯正位で再固定することも可能です。

  • PMMAフレームをギプスカッターで切断
  • 矯正した状態で再固定する

創外固定法の合併症として最も多いのはピン挿入部からの滲出液です。これは皮膚や筋肉などの軟部組織を巻き込んでピンを挿入することが主な原因であり、ピン周囲の軟部組織がピンの緩みを誘発し、緩んだピンは滲出液の原因となります。Safe corridorにピンを挿入することでこれらの合併症を最小限にすることが可能ですが、前述の理由により頭側面よりピンを挿入しています。合併症の発生リスクを低下させるため、異なる角度・平面から挿入したピンをそのまま固定しピンの引き抜き強度を高める、フレームと皮膚の距離をできる限り短くしてピンの作動距離を短くし、またフレームをtype IIにして固定強度、剛性を高めるなどの対策を行っています。創外固定法ではインプラントが体内に残存しないため、プレート固定でみられるようなインプラントに関連した長期合併症は起こりません。

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