日本小動物外科専門医のいる動物病院
通常、股関節は交通事故などの重度外傷によって脱臼しますが、小型犬の多くはソファーからのジャンプや散歩中など日常的な軽度のストレスにより脱臼し、これらの症例ではもともと股関節に亜脱臼や緩みなどの異常が存在する可能性があります。
様々な程度の跛行を示します。交通事故などによって受傷した場合には、呼吸器や神経障害に起因する症状を併発していることがあります。
脱臼の有無は整形外科的検査や臨床症状に基づいて診断できますが、X線検査で脱臼の方向などを確認し、股関節形成不全、レッグペルテス病、寛骨臼骨折、大腿骨頭骨折、変形性関節症などの股関節脱臼以外の基礎・併発疾患について評価することが重要です。

保存治療と外科治療があり、犬種、年齢、病歴、併発疾患の有無や重症度、受傷からの経過日数などに基づいて治療方針を決定します。
股関節の整合性が保たれており、脱臼以外の併発疾患がなく、受傷後早期(4〜5日以内)であれば、全身麻酔下で脱臼を整復し再脱臼防止のために包帯を4〜8週間装着することがあります。脱臼を繰り返している場合、大腿骨頭が整復できない場合、整復後に股関節が不安定な場合などは、外科治療が必要です。
外科治療は様々な方法があります。関節周囲にスクリューや縫合糸を設置して関節を安定化させる方法や、強靭な縫合糸を大腿骨頭靭帯の代替として機能させるトグルピン法などがあります。トグルピン法に使用する縫合糸は永久に関節の整復状態を維持できるわけではなく、股関節領域の軟部組織の治癒、瘢痕組織の形成および関節包の再生によって股関節の安定性が維持されます。
股関節にもともとの基礎疾患があり軽度のストレスで脱臼した症例では、上記の方法で治療しても再脱臼する可能性が高く、大腿骨頭骨頸切除や股関節全置換術などの方法を選択します。
大腿骨頭骨頸切除術は、大腿骨頭および骨頸を切除することによって、寛骨-大腿骨間の接触によって起こる疼痛を解消し、線維性の偽関節を形成する方法です。
非観血的整復法は、約50%の症例で再脱臼します。
外科治療の予後は、手術方法、整復後の安定性、受傷からの経過時間などによって様々です。早期に整復し、十分に安定化された症例の予後は良好で、正常な機能回復が期待できます。大腿骨頭骨頸切除術の術後は、わずかに肢が短縮し多少の関節可動域が失われますが、小型犬はこの方法によく反応し、日常生活にほとんど支障がない程度まで回復します。術後早期の患肢使用が推奨され、積極的なリハビリテーションが重要です。